前のバッグの記事で触れたミシン針の軸の長さの話です。
まず、針の部位の名称について。
一番太いところをシャンクまたは軸と呼びます。ここでは軸と呼ぶことにします。
軸からだんだん細くなっている途中をテーパー部。
針穴まで細く伸びているところを幹と呼びます。
詳しくは、オルガン針のカタログや、その他針屋さんのwebサイトなどに載っていますので、興味のある方はご覧ください。
オルガン針株式会社 ミシン針カタログダウンロード 主要寸法主要寸法 (pdfファイル)
ミシンの匠-5「針の極意-困ったらZ1!」
事の起こりは、バッグを縫っているときでした。
今まで家庭用ミシンで縫えていたバッグの一番分厚い部分が、職業用で縫えない……。
ミシンがガガガとおかしな音を立てて痙攣し、下糸がすくえないのです。
そこで、比べてみました。

左が家庭用ミシンのジャノメ モナーゼE4000。右が職業用ミシンのJUKI シュプールSL-300EXです。
右の針は、手回しにして頑張っても、これ以上針が入っていきません。針の太い部分「軸」で支(つか)えて、これ以上下に下がらないのです。
布が固くて入らないわけではありません。ファンシーツイードに超厚接着芯を貼っていますが、密度はスカスカで、抵抗はあまりありません。
単純に、厚みのせいで、針が支えているのです。
(この場所、金槌で叩いて薄くしようとしましたが、それでもダメでした)
家庭用で縫えるのに、工業用針では縫えない?
針を比べてみました。
左は家庭用針、右の2本は工業用針です。
黄色い線は、工業用の軸とテーパー部との境です。
家庭用は、軸がとても短い。
しかし、単純に針の長さのせいと言い切れません。
下糸に届くまでに、それぞれどれだけの長さが必要なのでしょう? 生地の厚みのために、どれだけの長さが用意されているのでしょう?

ミシン針をミシンに取り付け、いちばん針が下がった状態です。
左は家庭用。右は職業用。
家庭用は深く下がる必要があるようです。
このときの針板の高さで、油性ペンで針に印をつけました。
つまり、針板から軸、またはテーパー部までの長さが、生地の厚みのために用意されている長さと思われます。

針板の高さでつけた印で、針を並べました。
上の金色が工業用針、下の銀色が家庭用針です。
軸までの長さを比べると、家庭用のほうが長い。6~7mmあります。
工業用は5mmしかありません。
たった1~2mmの差が、バッグの分厚い部分を縫えるかどうか、明暗を分けたようです。
え、ちょっと待ってよ。
じゃ、もう同じバッグは職業用じゃ縫えないの?
職業用はせっかくパワーもあるし、マジックかけも持ってるし、ボビンケースを替えるだけで下糸を#30にできるのに!
(↓家庭用でも下糸#30を使う方法はあります)
(ミシンの基本操作*ミシンの縫い目(糸調子)の調節…*しもだミシン)
いえいえ。
19番針以上の太い針なら幹が長いのです。
太い針を使えば……。
↓
軸径がちがうので、ミシンの針棒交換と、下釜調整が必要になります。
↓
厚地専用ミシンになっちゃうじゃん! 薄地の服も縫うから、イヤ。
↓
軸径の変わらない針で、19番以上の針もあるよ(DB × A20)。……19番以上は解決。※釜調整が必要。(2017.8.31追記)
↓
18番以下で幹の長い(軸の短い)針を探そう。
オルガン針カタログとにらめっこ。
島田ミシンさんに相談に載ってもらい、その中でいちばん幹が長いDB X 1KKの16番と、(DB X 1KKには18番はなかったので)次に長いDB X 95の18番を取り寄せていただきました。
写真左から:
DB X 1 --- 16.00
DB X 95 18番 --- 13.50
DB X 1KK 16番 --- 12.50
上の数字はカタログ上の軸の長さです。たぶん単位はmmじゃないかな?
[2回]
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http://yarns.blog.shinobi.jp/Entry/177/厚地に使用するミシン針