今回あるじがチョイスしたのは、ロックフォールが4種類と、秋のチーズ2種類。
Roquefort Societe Baragnaudes
ソシエテ社のバラニョードは、バターのような口溶け。とろりと溶ける。
パンに塗ってみたいところ。
一般に流通している「ソシエテ」とは、熟成した洞窟が違うらしい。
Roquefort (Occitans) L'Arbas
オクシタン社のラルバは、最初にミルクの味がして、次第に青カビの刺激が来て、その中にミルクの香りがふんわりするという、比較的やわらかい風味。
Roquefort (Occitans) La pasutourelle
オクシタン社のパストレイユは、他の青カビと一線を画している。目的意識がはっきりしているストレートな味。カビにこだわりました!という味。
たとえるなら、天才ヴァイオリニストのソロを聴かされている感じ。
ガブリエル・クーレなどは、カビ以外の白い部分にも、ミルクのふくよかな味だとか、なめらかさや、やわらかさ、溶け具合など、こだわりが欲張りで、こちらはたとえるなら、天才ヴァイオリニストと何とかフィルハーモニーの共演というところ。
ところで、ガブリエル・クーレRoquefort (Gabriel Coulet)はデパ地下や輸入食料品店でも見かけるが、Alpageのと比べてイマイチだなーと思っていたら、そちらは熟成の短い(3〜4ヶ月)ものだったらしい。道理で安かったはずだ。
Alpageのは6ヶ月の赤ラベル。地元限定では12ヶ月のものもあるんだそうな。
チーズの旅をしたくなっちゃうな。
閑話休題。
Roquefort (Carles)
カルル社のものは、前回はガブリエル・クーレを少し風味を変えて、強い味わいにした感じだと思ったが、今回は熟成が微妙に違うらしく、力強くてストレート、しっかりとか堅実とかの言葉が似合いそうな味。
男性的という形容は確かにぴったりだと思う。根強いファンがいるというのもうなずける。
こちらもたとえるなら、ヴァイオリニストではなく、頑固なヴァイオリン職人という感じ。
ギャルソン
食べてみて、東毛酪農の低温殺菌牛乳を思いだした。
東毛酪農もギャルソンも、同じ群馬同士、何か共通点があるのだろうか?
ひじょうにクリーミーでさわやかな酸味があり、山羊乳で作ったクリームチーズのようだ。生クリームっぽさがある。
ユーカリの蜂蜜をかけると、味がバケた。上品なチーズケーキだ。完璧にお菓子の部類になる。
もっとも他の追随を許さない点は、雑味のなさだと思う。
ストレスのない味なのだ。
これは、単純な味という意味ではない。
喉や舌に引っかかる不快な味がないということだ。
そういう食材を、あるじはあまり多くは知らない。貴重なことで、あるじにとっては何より大事なことだ。
それから、香りもよかった。とびきりいい香りがした。さわやかで鼻にぬけるストレスのない香り。
ユーカリの蜂蜜
アカシアやレンゲのような喉を直撃するような甘さはない。ラズベリーの蜂蜜ほどあっさりしているわけでもなく、栗の蜂蜜のような異色さもない。クセのない上品な蜂蜜で、しっかりした感じ。
あるじはタンポポの蜂蜜が好きなのだが、それに比べてユーカリは野性味がない。その分、ほかの食材にもよく合うのかも知れない。
コンテ エクストラ セレクション 32ヶ月熟成
口に入れると、アミノ酸のつぶつぶがシャリシャリという、たいへん美味しいコンテ。旨みがぎゅっと凝縮されている感じ。
ときどき、コンテには単純な味のものがあって、料理に混ぜてしまえば別に問題はないのだけれど、食後、あるいは夜食に楽しみを……というには物足りないものがある。
でも、これは、食後のひそやかな楽しみにもじゅうぶん応えてくれる味。
ワインとマリアージュできればよかったが、体調がもどらないので、今回もノンアルコール。
自宅でETCのRookwoods紅茶ロイヤルミルクティー用の茶葉で、濃い紅茶を入れてみた。渋くて、口がすぼまっちゃうようなヤツである。
これとガブリエル・クーレ、パストレイユ、ギャルソンを合わせてみたら、紅茶の渋さが消え、コクが出て、チーズのミルキーさを引き立てた。
実は、この茶葉は、渋く淹れておいてミルクを入れると味が化けるんである。渋さが消えて、強いコクと強いボディとミルクのほのかな甘みが出る。
きっと、ミルキーなチーズには合うと思ったら、大当たり。
ところで、紅茶の渋いのとエグいのとは違う。
一般に「紅茶は渋い」と言われるが、あれは渋いのではなくて、エグいのである。
渋みは舌の中央部の辺りが縮むような味覚で、エグいのは舌の左右の端に感じる不快感である。
緑茶で渋茶を好む人がいるが、実際、渋い緑茶はそれなりに美味しく飲める。しかし、エグ味というのはいくら薄めてもダメ。マズい。
渋みは旨みなんである。エグみとは別のもの。
そして、エグい紅茶が世の中にはたくさん出回っている。
……というのは、当サイトの「紅茶への招待」でも書いているが、ETCの白城さんの受け売りである。
聞いた当初は「へえー」と初耳で考えたこともなかったが、その後、その意味がよくわかるようになった。
苦みも渋みも旨みなんである。
珈琲も、山菜なども苦い。でも、その苦さを好んで食べる。
でも、桃の苦いのは、たまらない。あれは、苦みではなく、エグみなんである。
バラード
さて、ブルーチーズには洋なしがよくマリアージュする。
今回の洋なしはバラード。
味と香りはラフランス。強烈な甘さと、どこか青さを感じさせる芳香。
歯ごたえ、舌触りは、少し弾力があり、缶詰で食べた洋なしを思いださせる。つまりは、ウィリアム(バートレット)である。
バラードは、ラフランスとウィリアム(バートレット)の交配種だ。
ウィリアム(バートレット)の遺伝のせいか、ラフランスより出回るのが早い。
あるじはバートレットの香りが嫌いなのだが、交配種のオーロラ(マルゲットマリーラとの交配)やバラードにはその香りがなく、美味しく食べられる。
洋なしの味比べについては、また別のスレッドにて。
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